3ba4420e.jpg

憧れの「清明上河図」と対面した感動はひとしお。
(↑画像は図録からですあせる


「そのうちそのうち」と、憧れの名画との対面に臆しているうちに、運命の2012年1月24日がやってきてしまったのであります。
1月2日から始まり2月19日に閉幕する東京国立博物館の特別展「北京故宮博物院200選」。
一番の目玉はなんと言っても「清明上河図」に他ならないわけですが、この絵が展示されるのは1月24日まで。
1月25日からは複製が展示されるとのことで、本物の姿を見られるのは1月24日が最後なのでありました。
こんな記事を書くほどに恋焦がれていた瑠璃子。
でも恋焦がれれば焦がれるほど、

「本物に触れたら、瑠璃子は感極まってどうかなってしまうのではないかしら」

そんな不安から今日まで訪問を延ばし伸ばしにしてきたツケが重くのしかかる1月24日早朝の瑠璃子。

「どうしよう…通常の登校日だ…」

逡巡する心は青春の証。
「ま、別に今度北京で見ればいいよね」と思い込もうとするけれど、「今度」や「明日」や「未来」なんて言葉は青春の辞書に無いの。
とりあえず午前中の授業は上の空でこなしたけれど、このまま平穏無事な単なる日常のままで今日という日を終わらせることなんか、やっぱりどうしても出来ない。
ええいままよ。
午後を何とか休んで上野へ直行。
be024092.jpg

数日前の雪が残る東京国立博物館本館。



結論。
素晴らしかった。
ゲルニカ並みの衝撃が絵巻に漲っていた。

東洋の「ウォーリーを探せ」の世界にいつまでも紛れ込んでいたかった。
けれどそれを許さない大行列。

いやはや、凄まじい行列でした。
3時間待ち。
3時間待ちですぜ、おやびん。

東京国立博物館平成館2階に設置された「清明上河図」。
それを見るための列が二階の回廊をウワバミのように曲がりくねって埋め、最後尾はとうとう1階のロビーにまで到達。
列そのものの長さはほんの数百メートルに過ぎないけれど、5メートルの長い絵巻をじっくり鑑賞したい人々の列ともなれば、牛歩も牛歩、結局並び始めて正味3時間、たちっぱなしでようやく「清明上河図」と対面できたのでした。
文庫本を持っていてよかった…


それにしても何なのでしょうか。
あの賑やかでいて静謐な画面は。
絵画の中の人物でありながら、誰よりも親しみ深い人たちは。

きっとこういうことなのでありましょう、「清明上河図」というお祭りを前に長々と列を作る多種多様な瑠璃子たち観客。
それぞれの暮らしを持ち、それぞれの人生を生きている。
それはもう、清明節のお祭りに生きる画中の人物そのものではないか。
瑠璃子たちはやがてみな朽ち滅びる。画中に留められた人々も今は千年前の土の中。
「清明上河図」は千年前の絵でありながら今の瑠璃子たちの姿そのものであるがために、親しみやすく、精一杯に騒がしく、そして静寂の世界に感じられるのでありましょう。


昔、瑠璃子が初めて降り立った中華の地は杭州でした。
宋の都がそこにあったからでした。
宋の都への憧れは、とある一幅の絵巻によって惹起されたものでした。
そう、「清明上河図」。

間近にみた本物のそれは、とてつもなく細密で、それでも非常に大胆で、この感動を表すすべを瑠璃子は持ちません。
わずか天地一尺ほどの画面に、なぜあれだけのものが描きこめるのか不思議でなりません。
画中の一人一人のドラマを想像し妄想していつまでも恍惚していたいと思いました。


図録もずっしりと豪華。
書籍というよりは鈍器に類する。

まあ瑠璃子は図録に関しては「もっと簡素な紙でよいから安くしろ」と非常なる憤りを覚えるたちですが、今回ばかりは買ってしまいました。
3d8bf564.jpg


ただし「清明上河図」の図版がいかにも足らない。
先日ふと漏らした「中国の人でもお椀や茶碗を持って口を付けて食べたりするのかしら」の疑問に「清明上河図」が明快に答えてくれたけどちょうどいい図版がない。
一人の男が丼を口に持っていって、ガガガとかっ込んでいる場面があるのです。


他の展示についても。
瑠璃子は宋が好きで、そして清が好き。
どちらも経済的繁栄を基に、文化的学問的な稠密化が進んだ時代。
その宋と清中心の展示というところがとてもよかった。

乾隆帝の馬上の姿や満州族伝統のキョンシースタイル。
まさかそれらの肖像画にここでお目にかかれるとは思わなかった。
966679ce.jpg
3031a078.jpg



朱子学の朱熹の筆墨。
通常前近代の漢詩は手書きであれ版本であれ、句ごとにスペースを空けて分かち書きするようなことはあまりないように思っていたけれど、朱熹の五言詩は十文字で一行。つまり一行に二句ずつきっちりと書いてあり、これもまた体系化を目指す哲学者の性格であろうかと面白く思った。


そんなこんなで満喫。
「清明上河図」を見終えて外に出たときには、すでに夜の8時を回っていました。
午後五時閉館というのに、五時までに列に並べば、何時になろうと「清明上河図」を見るまでは居残りをさせてくれるという東京国立博物館の姿勢には感謝。
た~だ~し!
それなら1月23日を「定休日ですのでww」とお休みするなよな、と怒りを覚えていたので、まあ評価は上がりもせず下がりもせず。なんてね。