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そう、この旅の最終点はここだったのだ、と確信した瑠璃子の大雁塔。
緑ヶ丘団地仙川アパート内を巡りながら、安いドラマ仕立てで人類の来し方行く末に思いをはせたりして。





仙川駅で旅を終えるのが寂しくなって、北上してみることにしました。
甲州街道を渡ると、途端に田舎道の印象。
とても成城からほんの数キロとは思えません。
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高い天に走る葉脈のような木々の枝。囚われの姫の気持ちになって、「自由に空を飛びたい」なんて心で叫んでみる
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 しばらく進むと川に出ました。そして対岸にはアパート群と、そして・・・
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真っ白な水道塔がすっくと空に向かうさまはたとえようもなく気高く思われました。
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今日の一日、すっかり体に染み込んだ世田谷・調布数十万人の生活臭が、すうっと頭のてっぺんから雲散霧消するかのような解放感。今なら空と一つになれそう。
水道塔こそ人間の生活のための人工物の権化なのに。不思議ですね。


住む人の少なくなった緑ヶ丘団地仙川アパート。仙川駅前の喧噪とは打って変わり、シンとした静けさに満ちています。
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団地内小さな数軒だけの商店街。
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どの自転車も後ろの荷台を荷物篭に変えていました。子供用の座席をつけた自転車はありません。
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ああ、かつて子供の声が響いたであろうアパート群。役割を終えたかのように静かに佇んでいます。
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 二列に並んだ建物の間を瑠璃子は歩いていきます。
「アパートよ、あなた方は寂しくはないのですか?」
「おお、若く美しい者よ。すべてのものは有限だ。無限でないからと言って寂しがる必要があろうか。我々はここに住む者たちに豊かさをもたらした。それが我々の役目だった。今我々は役目を終え、ようやく休むことができる。これから先の未来は君たちに託す。若く美しい者よ、時間もまた有限だ。焦らず、しかしまっすぐに進め!」

そんな問答を心にこねくり回しつつ、旅の終わりと真の旅の始まりを感じつつありました。

 
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武蔵野逍遥⑧ 旅の終わり