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川が流れる町は良い町である。
遠くに連峰、町中に川、そして下流に日本海。
金沢、いいとこ取りが過ぎませんか? 



二人で魚釣りに行かないか?
ノドグロから教室でそう誘われた時、瑠璃子は慌てふためいた。
クラスメイトの目が驚きに見開かれている。
「え、ええ・・・お誘いありがとう、いずれね」
「じゃあ決まりだ。今週の日曜。場所は「いつものとこ」。忘れずに長靴を持って来いよ」
それだけいうとノドグロは自分の席に戻っていった。教室がワッと色めき立った途端、始業のチャイムが鳴った。
その日から瑠璃子の昼食は一人きりになった。

「どうしてあんなことをいったの!」
放課後の学校の裏山はいつも通りシンとしていた。
「ごめん。もういつまでも隠していたくなかったんだ」
「だって浅草橋の友人はあなたのことが好きなのよ!」
「・・・へぇ、君の口からそんな言葉が出るなんてね。つまり君は僕を浅草橋の友人に譲るつもりというわけか」
あんまりな言いように瑠璃子は顔を手で覆った。
「ごめん言い過ぎた。俺も同じだ。クラスの男子から瑠璃子に告白したいと相談された。それで我慢できなかった」
二人の間に沈黙が降りた。野球部の声が冬の曇天の下を鈍く伝わってきた。二人は肩を寄せ合い斜面に腰を下ろした。

交差点が近づいた頃には辺りは真っ暗になっていた。二人の帰り道はここで別れる。
キキキキッー!!!!
「危ない!!」
ノドグロが瑠璃子を押しのけるのと、黒い鉄の塊がノドグロを跳ね飛ばすのとが同時だった。
一瞬のことだった。暗闇の中、赤いはずの血が真っ黒な石油のように湧き出して広がった。




・・・・・・室生犀星は犀川の西に生まれたから犀西=犀星というのだそう。
この写真の左岸が犀川の西岸。
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金沢にまつわる文豪というと泉鏡花ですが、不思議とその名を金沢ではほとんど目にせず。


近くの喫茶店で庭を眺めながらソフトクリームを舐めました。抹茶味やらいろんな味があります。
「金沢名物の「棒茶」味にしたわ」
「瑠璃子も!結構イケるわね」
「お土産が決まったわ、棒茶の安いパックね」
「瑠璃子も!」
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