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あ!そういえば、宮崎駿の新しい映画、始まってたっけ。
フリル付き天蓋の寝台から飛び起きて、映画館に駆けつけました。



『風立ちぬ』。
ハウル、ポニョと来て、宮崎駿にはもう期待できないのだと思っていました。
びっくりしました。
瑠璃子が間違っていました。

近年ない快作でした。




 



ひと月も前になりましょうか、浅草橋の友人からメールが届きました。
「やっぱり『耳をすませば』は感動だわ!」
・・・この人、なんだってまた急に『耳をすませば』を見てるのかしら。
わざわざDVDを棚の奥から引っ張り出してきたのかと思いきや、テレビでやっているというではありませんか。
なぜまた今頃?
「・・・ああ、わかった。つまりはジブリの新作前哨戦。・・・そう、また新作が出るのね・・・」
新作に興味ないふりをしながら、その日から頭の中に宮崎駿の影がちらついていたことは否めません。
でも、決して期待してはいけない。ハウル、ポニョにどんなにひどい目に遭わされたか、忘れてはいけないのよ!
新作情報を全てシャットアウトしてその日に臨みました。


新宿バルト9。
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館内には大きなタペストリー。
キャッチコピーは「生きねば。」ですか・・・。ちょっと適当過ぎて滑っている感じがします。
観終わった後は、いよいよ「このキャッチフレーズはあまりよくない」と思いました。
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さあ、開演です。400名の劇場に100名程度の入りでしょうか。
以下、ほとんど箇条書きの感想です(ネタバレはあるといえばありますがないといえばないですかね?)。


ジブリといえば風景の描写に定評があります。
たしかにもののけ姫を初めて見たときは、綺麗だと思いました。
今回も同様に綺麗。
でもその風景を俯瞰したり、高速移動すると、風景の色使いが途端に平板になってしまう物足りなさもこれまで同様です。
高い空から地表を見る画。するとさっきまで草の1本1本が塗り分けられていたような景色が、「草原」という色や、「群衆の顔」という色の一色塗になってしまい、セル画のベタ塗りみたいな印象になってしまいます。
日本の田舎町の上空を空想の中で飛び回る夢から始まるこの映画。ベタ塗りをみた途端ちょっと気持ちが覚めてしまったものの、いつしか物語に夢中になって、すっかりそんなことには気を払わなくなっていました。


物語は痛快に進んでいきます。
そのテンポの良さは、まるでラピュタの再来を見ているかのよう!
ただし物語の構図がはっきりしていたラピュタと比べると、『風立ちぬ』は物語の行く末がはっきりとしません。
「美しい飛行機を作り上げる」ことを少年の日の夢として抱き、空想の中で自由に空を駆ける堀越次郎。その夢をいかにして現実のものとするのかという、成長物語だろうとは思うのです。
ですが、物語の要素が種々入り乱れて、明確にはそこが見えにくいかなと感じました。


今作ではアニメ作家としての宮崎駿が久しぶりに張り切っています。
ハウルやポニョでしくじっていた、「アニメだからこその驚き」の創出に成功しています。
関東大震災の衝撃のアニメ表現。波打つ線路、大地、街。その後の余震の音響。
絵だけでも音だけでも表現できない、アニメだからこその生き生きとして不気味で凄みのある表現に、宮崎駿の本気を感じました。
黒川さんの極めてアニメ的造形もうまく映画にはまっています。
ハウルやポニョは、詩だったのだな、と今にして思います。
この映画は小説です。物語意識が濃厚だし、表現にも重厚なものが漂っています。
小説の宮崎駿はやっぱり天才的な力に満ちています。


堀越次郎が映画の最後に開発する96型。その折れた翼の造詣がどうも気になり、最後の最後にゼロ戦が出てくるとやはり美しいと感じました。と、同時に、なるほど、この場面は確かに韓国で反対を呼び起こしそうだとも思いました。
でも、この映画は、ゼロ戦賛美ではありません。
さきほど述べたように、「美しい飛行機を作り上げる」ことを少年の日に夢見て、そしてそのままその夢を持ち続け、現実化する努力を続けた一人の人の成長物語です。
この映画には、驚くほど戦争の場面が出てきません。せいぜいが特高の存在と、軽井沢に避暑そして避特高しているドイツ人が日本の苦しい戦況を皮肉に語るだけです。
「美しい飛行機を作り上げる」という夢を持った少年。夢の中ではいくらでも飛行機を操ることが出来る。しかし現実ではそうはいかない。その飛行機が戦争に使われるものだろうが、婚約者が苦しい病状に在ろうが、それらすべてを糧にして「美しい飛行機」の実現化に邁進するという映画なのだろうと思います。
だからこそ、「生きねば」というキャッチフレーズはちょっと違う気がします。
少なくとも戦争に負けても生きねば!という映画ではなかったように思います。
夢の実現が困難であろうとも現実に生きねば!という映画ではあるかもしれませんが、夢と現実に架け橋を渡そうというのがこの映画のテーマではないかと思われ、そうなるとやっぱり「生きねば」の意味がよく分からない気がするのです。



戦争を描きたかったわけではないとでもいいたげに、音楽もまるで夢の中のようなはかなさです。
ハウルの時のようなラテン系というか。マンドリン?のポロロンポロロンというメランコリックで春の日の陽だまりみたいな音楽が映画全編をつつましやかに彩っています。実に雰囲気に合っています(もっともメロディとしてはハウルの方が上ですが)。



何が言いたいのかわからない感想ですね。
既にみた人の感想もいろいろです。たとえば、
①時代背景が説明不足
⇒これは瑠璃子は感じませんでした。瑠璃子はもともとこの時代にちょっと興味があり過ぎるからかもしれません。

②荒井由実の「ひこうき雲」がよかった。エンディングの「ひこうき雲」に至る、壮大なPVとしての映画かと思った
⇒全く逆の感想でした。「ひこうき雲」はいい曲だし、この映画に合わせたくなる気持ちもわかります。しかし濃厚すぎます。この映画は、やはりマンドリンの軽やかで物悲しい音が似あっています。本編が曲のPVになっているのではなく、逆に本編の末尾に「ひこうき雲」が居候をしている感じがしました。


あ~、本当に雑な感想。
近いうちにまとめたいとも思うのですが。

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