kaguya (2)
高畑勲監督の最新作『かぐや姫の物語』を見てきました。
ちょっと長かったけれど、良い作品でした。


TOHOシネマズ府中にて。






今年は宮崎駿の『風立ちぬ』があり、高畑勲の『かぐや姫の物語』があり。
ジブリ豊作の年。
府中駅南口徒歩1分のTOHOシネマズへ。
 200名程度のスクリーンに、お客さんは30名程度。
う~ん、そんなに大ヒットではない、ということでしょうか。
kaguya (3)

うんざりするほど長い予告編の連発の後、ようやく本編が始まりました。
極めて原典の筋書きに忠実な映画であったため、物語は既知。ゆえに中だれして尺が長すぎると思いましたが、映像表現ならではの空恐ろしい創造が随所でなされており、そのあたりは素晴らしい作品だったと思います。


なんといってもその独特の絵柄、魅力的な線。
ラフな筆遣いのようでありながら細部まで神経が通っていました。
輪郭線数本で描かれたかぐや姫のすらりとした脚のしなやかさ。
宮崎駿と対極にあるような、徹底してベタ塗りをしない画面の厚み。
愛らしい人物造形。
独特の世界でした。


物語は連作短編のように、一つ一つの場面を丁寧に描きながら進んでいきます。
特に魅力的だったのは、かぐや姫の疾走と、月の迎えの場面。
予告編で丸々使われたかぐや姫の疾走はかぐや姫の怒りや悲しみを恐ろしいほどストレートに表現していました。
そして月の迎えの場面。
絶望的な暴力というものは突き詰めた明るさをまとっているものなのだ、とあっけにとられるよりない画面と音楽の完璧な演出。
この場面で見られる仏のアルカイックスマイルの恐ろしさ。
和音とリズム感に乏しい日本的伴奏音楽に代わって、突如明るい和音とリズムが鳴り響いた時の強烈な空虚感。


この2つの場面を再度体験するためにまた映画館に足を運んでも良いと感じるほどでした。
kaguya (1)

日本人の多くが、口には出さずとも興行収入に如実に反映させてしまってきた「宮崎駿>高畑勲」という評価。
しかしそれは全く愚かな誤解だったのではないでしょうか。
この両者はまったく別のベクトルな印象でした。それぞれにそれぞれの充実感がある。

今年の両者の作品は内容的に非常に豊かなものでした。
もう1~2作ずつ、見てみたいものだと思います。